レストランサービス技能検定は接客業の国家資格で受験にも条件がある
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外食文化が広く普及し、外食産業が重要なものとして認識されるようになった近年、レストランはただの食欲を満たすためだけの場所ではなく、食事を通してお客さんにサービスを提供する場に変わってきています。
そのようなレストランの立場の変化に伴い、そこで働く人の接客技術も注目を浴びるようになりました。
レストランサービス技能検定はこの接客技能を証明する資格です。
この記事ではレストランサービス技能検定とは何か、受験資格や試験内容について、を詳しく説明します。
この記事を読んでレストランサービス技能検定の受験に備えましょう。
レストランサービス技能検定とは接客業の国家資格
レストランサービス技能検定とは国家資格であり、レストランでの接客サービスやテーブルマナー、食品などについてプロにふさわしい知識を持っていることの証明になります。
料理と飲料をかけ合わせた言葉の「料飲サービス」に関する日本で唯一の国家資格で、この資格を持っていれば料飲サービスのプロであることがわかります。
取得には試験に合格する必要があり各級で受験資格が異なる
レストランサービス技能検定は1~3級の資格があり、それぞれの級を取得するためには試験に合格する必要があります。
各級で受験資格が異なるため、自分が受けようとしている級の受験資格をきちんと満たしているか、受験前にしっかり確認しましょう。
主な受験資格は実務の継続年数と資格取得状況
技能検定を実施する一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会のページで受験資格を確認すると、非常に複雑な受験資格が記載されています。
これをわかりやすく考えると基本は実務の継続年数で受験資格を得られて、下位の資格取得状況や教育機関での料飲サービスの教育状況によって、継続年数が短くても受験資格を得られると考えてください。
基本は以下が各級の受験資格です。
1級 料飲サービス業務に関し11年以上の実務経験を持っていること
2級 料飲サービス業務に関し3年以上の実務経験を持っていること
3級 料飲サービス業務に関し1年以上の実務経験を持っていること
これに対して、たとえば3級は学校教育で料飲サービスに関することを学んでいれば、実務経験は不要で受験資格を取得可能です。
2級についても大学で料飲サービスに関する学科を修めて卒業すれば実務経験不要になったり、短大や専門学校卒業なら1年以上の実務経験で受験資格を得られたりします。
また、たとえば2級に関しては3級を取得後に実務経験を2年継続すれば受験資格を得られるため、下位の級をもっていることでも受験資格のための実務経験を短縮できます。
実務経験の規定は年数のみで雇用形態の規定はない
これらの実務経験については、規定は年数のみで雇用形態の規定は記載されていません。
つまり、正社員でなければ受けられないわけではなく、アルバイトやパートなどで実務経験を積むことも認められています。
ただし、レストランサービス技能検定以外の資格で考えると、雇用形態は問わないが週に4日以上、1日6時間以上を実務経験として認めるという資格もあります。
レストランサービス技能検定には雇用形態についての明確な規定はありません。しかし、年によっては日本ホテル・レストランサービス技能協会がなんらかの制限を課している可能性も否定できません。
よって、受験する時期が決まったらその時期に日本ホテル・レストランサービス技能協会に問い合わせて、受験資格を取得する方法や雇用形態による制限がないことを確認するようにしましょう。
取得難易度は級により異なる
レストランサービス技能検定の取得難易度は級によって大きく異なります。
1級合格率は約35%と低いが3級は約60%と高い
最高位の資格である1級は合格率が35%と推測され、やや難易度が高いと考えられます。2級も40%程度と合格率は決して高くなく、こちらも1級に準ずる難易度です。
3級は合格率が60%程度あり、これは国家資格の中では比較的容易な部類に入るでしょう。
合格率だけで考えるならば、司法試験や医師国家試験など特定の教育を受けなければならない資格を除き、難易度が高いとされる資格が宅建士や公認会計士です。
宅建士は令和4年の合格率が17.0%、公認会計士は令和4年の合格率が7.7%と非常に低くなっています。
これと比べれば1級2級も比較的容易に見えるかもしれません。しかし、実際は3人受けて2人が落ちると考えると、準備をしっかりしないとなかなか受からない難易度だとわかります。
3級に関してはこれよりも難易度は低いですが、3人のうち1人が不合格になってしまうため、こちらも十分な準備をしてから受験をしましょう。
すべての級で筆記試験と実務試験がある
レストランサービス技能検定ではすべての級で筆記試験と実務試験があります。
筆記試験に関しては以下のような内容が出題範囲です。
1. 食品衛生及び公衆衛生
2. 料飲一般
3. レストランサービス
4. 食文化
5. 施設の管理等
6. 苦情への対応
7. 関係法規
8. 安全衛生
これらの出題範囲に対して問題数は100問(各1点)で、正誤判定の減点方式で回答します。
正誤判定の減点方式の考え方が少し複雑なため、ここで解説します。
まず正誤判定の形式についてです。これはそのままの意味で問題文が正しいか誤っているかを判定するものです。2022年の過去問から簡単な問題を引用してみましょう。
問題は「宴会の運営では、閉会・閉宴の際、会場内における忘れ物の確認も大切な業務のひとつである。」です。
あなたは試験会場でこの文章が正しいか間違っているかを判定します。この記述は正しいため、マークシートで「正」をマークしましょう。このような問題を100問解答します。
次に減点方式についてです。これは解答したものの正解数から誤答数を減点する方式です。
たとえば100問中90問に解答したと仮定しましょう。すべて正解であれば90点で、10問を間違って解答した場合、普通の試験なら80問正解で80点になります。
しかし、レストランサービス技能検定は減点方式であるため、獲得した80点から誤答した10点分が減点されて70点があなたの点数です。
このように100問の問題に対して正誤を判定し、減点方式で採点されるのがレストランサービス技能検定の筆記試験です。
すべての級で合格基準は60点以上
筆記試験はすべて上記の試験形式でそれぞれの級で合格基準は60点以上です。
減点方式であることを踏まえて60点の取得方法を考えると以下のような場合が考えられます。
100問中100問解答し20問誤答である場合:
80点獲得―20点減点=60点
100問中70問解答し10問誤答である場合
70点獲得―10点減点=60点
この他にもすべて正解で100点満点や、ギリギリですが60問解答しすべて正解で60点を獲得する場合も合格基準を満たせます。
また、筆記試験だけではなく実技試験でも合格基準は60点です。実技試験に関しては明確な加点や減点の基準は示されていません。
過去の実技試験は過去問として公式ホームページに公開されているため、その過去問を参考に対策を行いましょう。
資格取得者は接客業のプロとして技能士を名乗れる
各級に合格した人は接客業のプロであることを認められ、レストランサービス技能士を名乗れます。
このレストランサービス技能士は名称独占資格です。名称独占資格とは資格を持っていない人が資格の肩書きを名乗ることを禁止されている資格を指します。
この場合、レストランサービス技能士の資格を持っていない人が、レストランサービス技能士の資格を名乗って仕事をすると違法になるという意味です。
ただし、レストランでの接客サービスは誰でもできるため、業務までは独占しません。
過去問が公式ページにあるので準備して臨もう
レストランサービス技能検定はレストランでのサービス提供や食品などにおいて、プロにふさわしい知識と実務スキルを持っていることを認める資格です。
実務や学校教育などの受験資格を得て試験に合格した人がレストランサービス技能士の資格を得られます。
試験は学科、実務ともに60点を合格ラインとしています。合格率から考えて国家資格の中では高難易度ではありませんが、十分な対策をしなければ合格は難しいレベルと考えましょう。
対策には公式が提供している過去問や市販の問題集を使うなどして、十分な準備をしてから試験合格を目指しましょう。